AIO対策という言葉を、この1年で急に聞くようになりました。呼び方はいくつもあります。AI Overviews対策、GEO(生成AI検索向けの最適化)、LLMO(大規模言語モデル向けの最適化)。どれも指している中身はほぼ同じで、「AIの回答に自社の情報を引用させる」ための施策です。
AIO対策の中身は、8〜9割が従来のSEOそのものです。ただし残りの1〜2割に本物の差分があり、そこを押さえないと「SEOで上位なのにAIには出ない」が実際に起きます。この記事では、どこまでが同じで、どこからが違うのかを、出典つきで切り分けます。
AIO対策の正体。SEOの言い換えが8〜9割、本物の差分が1〜2割
AIO対策と呼ばれる施策を並べると、8〜9割は既存のSEO施策に別の名前を付けたものです。「一次情報を書く」「出典を明記する」「見出し構造を整える」「著者情報を出す」「表示速度を上げる」は、10年前からSEOの基本として言われてきたことと変わりません。
根拠はGoogle自身の説明です。公式ドキュメント「AI機能とウェブサイト」には、AI OverviewsやAIモードに表示されるための追加要件はなく、特別な最適化も必要ない、と書かれています。専用の構造化データを足す必要もない、との記述もあります。Googleの担当者Gary Illyes氏も、2025年7月のSearch Central Deep Dive(アジア太平洋)で「AI Overviewsに出したいなら通常のSEOをすればよい」と述べました。
では残りの1〜2割は何か。差分は4つあります。
- 引用の単位が、ページから段落に変わった
- 自サイト外での言及が、被リンクとは別の軸で効く
- ChatGPTなどは、GoogleではなくBingのインデックスを参照する
- 測る指標が、順位と流入から、指名検索とAIでの出現に変わった
この4つは従来のSEOに含まれていません。
「SEOで上位なのにAIに出ない」は、この4つのどれかが欠けている時に起きます。SEOツール会社Ahrefsが2026年3月に調査を公開しています。AI Overviewsに引用されたページのうち、そのキーワードの検索結果で上位10位以内に入っていたものは37.9%でした。残りの31.2%は11〜100位、31.0%は100位圏外です。上位にいても引かれない、圏外でも引かれる、という現象が同時に起きています。
なぜ「SEOと同じ」と言えるのか
引用元はGoogleの検索インデックスから選ばれる
AI Overviewsとは、Googleが「AIによる概要」と呼ぶ、検索結果の上に出るAI要約です。AIモードは、2025年9月9日から日本語で提供が始まった対話型の検索です。どちらも引用元はGoogleの検索インデックスから選ばれます。インデックスに入っていないページが引かれることはありません。だからクロールとインデックスというSEOの土台が、そのままAIO対策の土台になります。
上位表示との重なりは、以前より薄くなっています。Ahrefsの2025年7月の調査では、AI Overviewsの引用元の約76%が上位10位以内でした。2026年3月の再調査では37.9%まで下がっています。ただし、この数字は「上位でなくてもよい」を意味しません。引用元の約69%は上位100位以内で、圏外の31%についてもAhrefsは「別の関連検索での上位ページを引いている」と説明しています。土台はやはり検索順位です。
なお、この重なり率はSEOツール会社の調査で、会社ごとに方法が違い、数字にも幅があります。BrightEdgeのように、もっと低い重なり率を出している調査もあります。傾向として「上位からの引用だけではなくなった」ことは複数の調査で一致していますが、個々の数字は目安として読んでください。
引用されやすい条件は、良いSEO記事の条件と一致する
AIに引用されやすいページの条件は、良いSEO記事の条件と重なります。Googleは2025年5月の検索セントラルブログで、AI検索で成果を出すための方法を挙げました。主なものは次の5つです。
- 人のために書かれた独自の内容
- 良いページ体験
- クロールできる技術的な状態
- 表示内容と一致した構造化データ
- 画像や動画を含めた多様な形式
この5つの中に、2024年以前のSEOになかった項目はひとつもありません。
引用元の傾向も、一次情報を優先する従来のSEOと同じ方向です。Pew Research Centerが2025年7月に調査を公表しています。AI要約の引用元に政府系(.gov)サイトが占める割合は6%で、通常の検索結果の2%より高い数字でした。Wikipedia、YouTube、Redditの3つで引用元の15%を占め、通常検索の17%とほぼ同じでした。AIが引用元に選んでいるのは、特別なサイトではなく、通常検索と同じ信頼できる一次情報です。
llms.txtは、Googleが採用していない
llms.txt(サイトの要約をAI向けに置くテキストファイル)を置けばAIに読まれる、という施策が売られています。しかしGoogleはこれを採用していません。GoogleのJohn Mueller氏は2025年6月17日にBlueskyで「現時点でllms.txtを使っているAIシステムはない」「サーバーログを見れば明らかで、AIチャットボットはページは取りに来るがllms.txtは取りに来ない」と述べました。前述のGary Illyes氏も2025年7月に「Googleはllms.txtをサポートしておらず、予定もない」と答えています。Google公式ドキュメントにもllms.txtの記載はありません。
置くこと自体に害はありません。ただ、置いたことでGoogleのAIに引かれるという根拠は、今のところどこにも示されていない状態です。OpenAIのクローラーがllms.txtを取得している、という観測は業界メディアで報じられています。しかしOpenAIが利用を公表した事実は確認できませんでした。llms.txtを主力商品にしている提案は、この事実を知った上で見てください。
SEOと違う本物の差分4点
差分① 引用の単位がページではなく「段落」
AIが引くのはページではなく段落です。GoogleのAIモードは、質問をサブトピックに分解し、それぞれについて検索を実行します。Googleはこの仕組みをクエリファンアウトと呼び、2025年9月の日本語提供の発表でも説明しています。つまりAIが探しているのは、「この質問に一番よく答えているページ」より「このサブ質問に一番よく答えている箇所」です。Ahrefsは、上位10位との重なりが76%から38%へ下がった理由として、このクエリファンアウトの強まりを挙げました。
実務での書き方は3つに集約されます。見出しの直下に結論を一文で置くこと。数字と出典を同じ段落に入れること。1段落に1つの論点だけを書くことです。結論が段落の最後に来る文章や、出典を末尾にまとめた文章は、人が読む分には問題ありません。しかし段落単位で切り出された時に、根拠を失います。この記事も、各段落の先頭に結論を置く形で書いています。
ページの順位が高くても、段落が答えていなければ引かれません。逆に、順位が低くても、あるサブ質問に対して一番明快な段落があれば引かれます。「上位なのにAIに出ない」の原因として、最初に疑う場所はここです。
差分② 自サイト外の言及が、被リンクとは別の軸で効く
自社サイトの外で名前が出ているかどうかが、被リンクとは別に効きます。Ahrefsは2025年5月に、75,000ブランドを対象にした調査を公開しました。AI Overviewsにブランド名が出る回数と最も強く相関したのは「Web上でのブランド言及」でした。相関係数は0.664です。被リンク数との相関は0.218で、リンクの有無より「名前が書かれているか」の方が強く関係していました。これは相関であって因果の証明ではありませんが、従来のSEOでは「リンクのない言及」を重視してこなかったことを考えると、明確な差分です。
実務では、リンクが付かない言及も資産として数えます。業界メディアの記事や口コミサイト、取引先の事例ページ、地域のポータルやSNSの投稿が対象です。従来なら「リンクが付かないなら意味が薄い」と後回しにしていたPRや広報の仕事が、AIに引かれる土台になります。
差分③ ChatGPTやPerplexityはBingのインデックスも参照する
ChatGPTやPerplexityの検索は、Googleではなく主にBingの側を見ています。Microsoftの2025年6月のBing公式ブログに、次の一文があります。「BingはYahoo、DuckDuckGo、Microsoft Start、そしてChatGPTやInflection.aiのようなAIツールを含む幅広い検索・AI体験を支えている」。OpenAIも自社のヘルプセンターで、第三者の検索プロバイダーと提携していると説明しています。Perplexityは自社クローラー(PerplexityBot)と外部インデックスの併用と報じられていますが、公式の内訳は非公開です。
見落としはここで起きます。Googleでしか順位を追っていない会社は、Bingでのインデックス状況を一度も確認したことがありません。Bing Webmaster Tools(Bingの無料の管理ツール)への登録も、サイトマップの送信も済んでいない。Bingで検索すると、自社サイトが数ページしか出てこない。この状態のまま「ChatGPTに出ない」と悩んでいるケースは珍しくありません。Microsoftは2026年2月、Bing Webmaster Toolsに「AI Performance」というレポートを追加しました。CopilotやBingのAI要約に、自社ページが何回引用されたかが見られます。Bingに登録して初めて、この数字が見えます。
差分④ KPIが変わる。引用されてもクリックは来ない
AIに引用されても、クリックはほとんど来ません。Pew Research Centerは2025年3月、約900人の米国成人の閲覧履歴(68,879件の検索)を追跡しました。AI要約が表示された検索で、通常の検索結果がクリックされた割合は8%。表示されなかった検索では15%でした。AI要約の中のリンクがクリックされた割合は1%です。AI要約を見たあとに検索をやめてしまう割合も26%で、要約なしの16%より高くなっていました。
だから、順位と流入で測ると、AIO対策は「やっても数字が動かない施策」に見えます。Google Search Consoleには2026年6月3日、「生成AI向けパフォーマンスレポート」が一部サイトから追加されました。AI OverviewsとAIモードでの表示回数が見られます。ただしクリック数や順位は含まれていません。
測る指標を変える必要があります。KBTが推す指標は4つです。指名検索の増加(Search Consoleで会社名・サービス名を含む検索の表示回数を追う)。AIの回答に名前が出るか(ChatGPT、Gemini、Perplexityに月1回同じ質問をして記録する)。AI経由の流入(Google Analyticsで参照元がchatgpt.comやperplexity.aiのセッションを分ける)。Bing Webmaster ToolsのAI Performanceに出る引用数。この4つは、順位が動かなくても先に動きます。
「AIO対策業者」の見分け方
AIO対策を売る会社を見分ける質問は3つです。答え方に、SEOの土台の有無が出ます。
1つ目は「llms.txtと構造化データ以外に、何をしますか」です。この2つだけを売り物にしている提案は、Googleが「必要ない」「使っていない」と明言している施策を主力にしています。構造化データそのものは表示内容と一致していれば有用ですが、AI専用の魔法ではありません。
2つ目は「うちのサイトの検索順位とインデックス状況は見ましたか」です。土台を見ずにAIO対策だけを提案する会社は、2つに分かれます。引用元がGoogleとBingのインデックスから選ばれる仕組みを理解していないか、知っていて言わないかです。
3つ目は「効果は何で測りますか」です。「AI Overviewsに出します」と約束する会社は、Googleが選ぶものを自分が決められると言っていることになります。指名検索、AIの回答での出現、Bingの引用数のように、動く指標を先に決めて提示する会社を選んでください。
明日からできる実務チェックリスト
自社サイトで今日確認できる項目を7つ挙げます。ツールはどれも無料です。
- Google Search Consoleで、主要ページがインデックスされているか確認する。 「ページ」レポートで「登録済み」に入っていないページは、AIの引用候補にもなりません。
- Bing Webmaster Toolsに登録し、サイトマップを送る。 Search Consoleからのインポート機能で数分で終わります。登録後、Bingで「site:自社ドメイン」と検索して、出てくるページ数をGoogleと比べてください。
- 主要ページのh2見出しの直下に、結論の一文があるか見る。 見出しの次の文が前置きから始まっていたら、結論を先頭に移すだけで段落引用に強くなります。
- 本文中の数字に、出典と年月が同じ段落にあるか見る。 「調査によると」で止まっている数字は、出典名と年を足してください。
- 会社名・サービス名でGoogle検索し、自社サイト以外のページに名前が出ているか数える。 3件未満なら、サイト外の言及を増やす仕事が先です。
- ChatGPT、Gemini、Perplexityに「(地域)で(業種)を探している」と聞き、自社の名前が出るか記録する。 月1回、同じ質問で続けます。出ない状態から出る状態への変化が、AIO対策の最初の成果です。
- robots.txtで、Googlebot、Bingbot、OAI-SearchBot、PerplexityBotをブロックしていないか確認する。 セキュリティ対策のつもりでAIクローラーを一括拒否している設定が、引用の可能性を消していることがあります。